読書メモ

タイ深南部情報(ウェブサイト編)

自分の業績を忘れて検索をしていたときに見つけた「深南部勉強ノート」というブログがある。本業ではないとの断りがあるけれど、とても丁寧に資料がまとめられている。ブログへのアクセスは限られていて、何やらエゴサーチしている研究者ばかりらしい(そのうちの何回かはきっと自分だと思う)。アンテナは壊れ気味で、世の中知らないことばかりではあるが、ここではタイ深南部にかんする情報が得られるウェブサイトについて、わたしが把握できている限り紹介していきたい(随時、変更・追加予定)。

日本語で(も)読めるウェブサイト:日本語で得られる情報量の順

日本語で、かつ、情報量がもっとも豊富なブログ。ブログの主催者の方は存じ上げないが、情熱を感じる。

武装組織とタイ政府とのあいだの和平交渉に力を尽くしてきた、堀場明子さん1。紛争解決・平和構築に関心のある方は、リーダーシップもバイタリティもすごい堀場さんが率いる笹川平和財団のチームの動向を追いかけるべし。ご著作に「タイ深南部・パタニ紛争――なぜ紛争は国際問題化しないのか」川名晋史編著(2019)『共振する国際政治学と地域研究』勁草書房所収などがある。

日本における東南アジア地域研究の一大拠点である、京都大学東南アジア研究所が主催するウェブサイト。東南アジア各国の現状や最新の研究動向がわかる。英語、インドネシア語、タイ語、日本語、ベトナム語で記事が読めるようになっている。深南部にかんしても、ダンカン・マッカーゴ教授やドン・パターン氏など第一線で活躍する研究者・専門家や、若手研究者が寄稿している。日本語訳がたまに、ほんのちょっとだけ怪しいけれど、授業などで配って読んでもらうのにもちょうどよい長さである。

深南部のことを知りたいならば、このサイトである。今でこそ、市民から研究者にいたるまであらゆる属性の人々があらゆるツールを使って発信するようになっているが、Deep South Watchは紛争初期から、客観的なデータに基づいて現地の情報を伝え続けてきた。日本語の記事は少ないが、いくつかある。これらは原新太郎先生(下記参照)が訳した記事だったと記憶する。

深南部には、マレー語パタニ方言を話す人たちがいる。そこで現地の学生に「標準マレー語」を教えていた原新太郎先生が、日本語で発信するために作ったFacebookのページ。マレーシア語はネイティブ以上にでき、タイ語も英語もネイティブなみに使いこなす。シャヒード(殉教)にかんするテーマで研究を続けておられる。

2021年の初頭に、分離独立派組織、タイ政府当局、学者など「和平対話」にかかわっていた人たちがオンラインで集うイベントがあった。司会をつとめた事務局の方が、原先生に通訳・翻訳の助けを求めている様子が何度か聞こえてくる。モデレーターを務めたタパニーさん(右)は、チャンネル3の著名なジャーナリストで、深南部の取材も長年続けておられる。

日本語は不定期で、あまり更新されている気配がない。原先生の動向を追いかけるならば、英語・タイ語で論考を多数出しておられるのに加え2、Facebook上のポストがすべて公開されているので見てみてほしい。私はFacebookを含めてSNSがものすごく苦手なのだが、原先生が主催しているPatani Booksを(年に数回だけでも)チェックするために維持しているようなものだ。SNSで得られた情報を駆使して研究を進める大学院生や研究者もいるのだから、SNSで得られる資源を活かせる技術をもった方は、どんどん活かしていけばよいと思う。

  1. 堀場さんについては、以下の記事がお人柄も含めてよくまとまっている。武闘派も静まる“なでしこ”仲裁 タイ紛争地で日本女性が奮闘
  2. たとえばプラチャータイの英語版記事。https://prachatai.com/english/category/hara-shintaro

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