フィールドワーク四方山話

ヤンゴンの原宿フレーダン

ミャンマーに詳しいある知人が「観光っていっても、結局パゴダばっかじゃないですか、この国って」と言っていて、はっとしたことがある。言われてみれば、たにかにそうなのだ。ヤンゴンならシュエダゴン・パゴダ、スーレー・パゴダ、バガンなら仏教遺跡、マンダレーならマハムニ・パゴダ。どこへ行っても、外国人はとりあえずパゴダに連れて行かれる。一つや二つなら感動的でも、似たようなパゴダばかり見続けていたらもう十分という気になるのもわからないではない。もちろんパゴダもゆるキャラの宝庫で見方によってはパラダイス(小枝探偵)なので、そういった楽しみ方もあると言えばあるのだが。ミャンマー編では現地在住経験者ならではの一風変わった視点で、オススメ観光スポット、穴場スポット、B級スポット、その他役に立つのか立たないのかわからない情報を紹介していきたい。

フレーダンは若者の街

パゴダに飽きた人もそうでない人も、ヤンゴンに来たならぜひとも足を運んでほしいエリアがある。それは、在ヤンゴン日本人のあいだで「ヤンゴンの原宿」の異名をとる「フレーダン」である。フレーダン近くにはヤンゴン大学とヤンゴン外国語大学が近くにあり、学生だけでなく地方から出てきた若者も集まって住んでいる。原宿同様、まさに若者の街なのだ。

このフレーダン、日中もさることながら、夜には大通りに屋台が並び、夜が更けるほどに人通りが増えて活気を増す。しかし意外にも外国人観光客はほとんど見かけず、隠れた夜遊びスポットである。涼しくなってきた夕方ぐらいから繰り出して、露店を見て歩いたり、大通りを行きかう人々をぼんやり眺めながら屋台飯を頬張ったりするのが、フレーダンっ子のナイト・ルーティーンである。

ちなみにフレーダンには何年か前にフレーダンセンター(Hledan Center)という巨大ショッピング・モールがオープンしている。ますますフレーダンは盛り上がりを見せているが、近代的なモールにおされずに、屋台飯も生き残ってほしい。

フレーダン通り。このまま進むと右手にセインゲーハーが見え、さらにピー通りにぶつかる。
Sunkistのオレンジがまぶしい。(2015年7月)

【食べる】

・ヨーグルト屋さん「屋台ヨーグルト」(Hle Kale Ne Deingyi)

ヤンゴンで知らない人はいない超有名ヨーグルト店。元々屋台だったヨーグルト屋は、徐々にファンが増え、フレーダン市場近辺に店舗を構えるに至った。その名残で「屋台ヨーグルト」という店名になっている。老若男女問わずここでみんな飲むヨーグルトを飲んで、英気を養うのだ。ウートゥンリンチャン通り(U Tun Lin Chan St.)店とフレーダン市場店、フレーダンメイン通り店の三店舗ある。最後にオープンしたメイン通り店では飲むヨーグルトのほかドミノやファルーダなどの南アジア系激甘飲料も楽しめる。スイーツ好きには垂涎モノ。

・タミントウッ(店名なし)

こちらもウートゥンリンチャン通りにあるお店。こじんまりとした店構えで、店名すらないにもかかわらず、この店の評判はヤンゴンに広く知れ渡っている。タミントウッとともにチャーザンチェッ(鶏で出汁をとった春雨スープ)も有名。「トウッ」は和えるという意味。一番有名なのはラペットウッで、これは「ラペッ」と呼ばれる発酵させた茶葉とゴマ、ピーナッツ、ニンニクチップス、その他豆類を混ぜたお茶請けである。「タミン」は白ご飯の意味で、タミントウッは白ご飯とラペットウッを和えたものである。見た目はチャーハンみたいだが、炒めていないので、和えご飯である。フレーダン市場近くのタミントウッで有名な店に行きたいと言えば、きっと優しい人が案内してくれるに違いない。

画像が荒く、しかもこれは別の小綺麗な店のタミントウッだが、こんな感じの和えご飯。

・焼きティラピア(ンガーキン)

夜になると屋台が増えだして、そこここからおいしそうなにおいが漂ってくる。ミニテーブルにお風呂用の椅子に大人がちょこんと座って、体を丸めて焼き魚にかじりついている。屋台名物の焼きティラピアである。野外で食べる焼き魚のおいしさを私はフレーダンで知った。友人いわく、ヤンゴン南部のトゥンテーという街で獲れたとのこと。この街は焼き物が有名だが、イラワジ川支流での漁業も盛んらしい。味は鯛によく似ていて、川魚らしくあっさりしている。香辛料がほどよく効いており美味しい。

・ミエーオーミーシェー

フレーダンの夜の屋台飯のもう一つの定番が「ミエオーミーシェー」だ。これは「マーラーヒン」というシャン料理がもとになっている。マーラーヒンとは、茹でた野菜と大小さまざまな麺類を、鶏ガラと豆板醤などからなる辛味ソースで炒めた豆腐、ウズラの卵、キノコなどと和えた料理である。マーラーヒンは中華料理のマーラーシャンコー(麻辣香鍋)によく似ていて、おそらくその影響を受けて生まれた料理である。ミエオーミーシェーはマーラーヒンよりもスープが多くて、熱々である(土鍋(ミエオー)で煮るからこの名前になっている)。マーラーヒンもミエオーミーシェーもほどよい辛さがクセになる。女性二人で、焼きティラピア一つ、ミエオーミシェー一つをシェアするぐらいがちょうどよい。

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奥がミエオーミーシェー。ティラピアにはピーナッツがのっており、美味しい。
(2018年3月)

・Kosan Café

日本人オーナー岡本さんによるカフェ。オシャレな見かけとは裏腹にコスパがかなりよく、ミャンマー料理はちょっとという向きにも気軽に通える貴重な店である。普段はフレーダンっ子たちで賑わっていて、フレーダンの象徴と言ってもよいだろう。私はここで頻繁に焼き飯(タミンヂョー)をテイクアウトしていた。

【見る】

・フレーダン市場(Hledan Market)

残念ながらダウンタウンのボーヂョー市場は観光客目当ての市場で地元感が薄い。できれば地域密着型の、人々が普通に日用品や食料を調達する市場を一度は体験してほしい。見たことのない野菜、魚、ンガピ(魚やエビを塩漬けにして発酵させたもの)、肉類などを売る青空市場には、その日の献立を考える主婦たちで溢れている。とくに朝は主婦たちの主戦場で、いかに交渉して良いものを安く入手するかに命をかける。買い物を済ませて朝のスナックをそのまま食べて帰ったり、テイクアウトしたりする。こうやって一日が始まる。

青空市場では食料だけでなく、おもちゃや女性用・男性用の下着なんかも普通に並べて売っている。ありとあらゆるものがそろっている。近くに屋内のフレーダン市場もあり、こちらもミャンマーの典型的な市場である。

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ヤンゴンの典型的な青空市場(八百屋)の様子。
ミャンマーの食文化は豊かな食材に支えられている。

・ヤンゴン外国語大学

フレーダンの交差点から東にかなり歩くと、右手に見えてくるのがヤンゴン外国語大学である。中には入れないかもしれないが、外からでも大学生の雰囲気が伝わる。ミャンマーでも外大は女子に人気。韓国語、中国語、日本語、ミャンマー語、タイ語、英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、ロシア語の10言語が学べる。そのほか社会科学系の学部もある。(留学日記も今後書いていきたい)

・セインゲーハー(Sein Gay Har)

フレーダン通りを西に進むと左手に見えてくる。フレーダン市場とともにフレーダン住民の心の拠り所であるスーパーマーケット。外があまりに暑いときはここで涼むといい。大手スーパーCity Martは殺風景すぎるが、セインゲーハーは同じスーパーと言えどもどこかほっこりしている。明らかに涼みに来ているだけの人が多かったし、City Martほどセレブ感が漂っていないのがよかった。そういえば2011年ころは入り口で全員手荷物検査を受けた。ほかの店で買い物したビニール袋を持っているとその口をセロテープで閉じられた。万引き防止であろう。スーパーで買い物するだけなのになかなかの物々しさである。

フレーダン通り。左手に見える黄色い囲いがセインゲーハー。上はコンドミニアムである。
夜になるとこのあたりには屋台が並び、人通りが一気に増える。


【アクセス】

地理的にはダウンタウンが一番南で、ピー通りを北上するとミニゴン、さらに北上するとフレーダンだ。ダウンタウンからバスで(空いていれば)30分もすれば到着する。(少し情報が古いので、所要時間・料金とも少し異なるかもしれません。もし違ったらすみません!)

  1. タクシー:ダウンタウンからタクシーで平均30分程度。(空いていたらもう少し早いが、混んでいたらもっとかかる)3000~5000チャット(約300円~500円)
  2. 路線バス(YBS):ダウンタウンのスーレーから平均30分程度。料金が変わっていなければ200チャット(約20円)程度。
  3. 電車:行くことは可能だが、未経験のため所要時間・料金不明。ミャンマー人ですら利用していない。

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