フィールドワーク四方山話

タイ深南部に行く(飛行機編)

パッターニー県、ヤラー県、ナラーティワート県、ソンクラー県の一部。通称深南部と呼ばれる地域は、外務省の危険情報ではレベル3(渡航中止勧告)、退避勧告の一歩手前である。バックパッカーのみならず旅行者のあいだで安定の人気を誇る『地球の歩き方』でさえ、深南部の紹介は昔は1ページくらいしかなかった(今は全体的に分量が増えているのもあるが5ページくらいある)。この地を訪れる旅人はタイに住んでいてタイ語ができる人か、マレー半島の縦断を試みる人といったところだが、深南部はマレー・イスラーム文化と東南アジア大陸部の仏教文化が出会う、とてもユニークで見どころ満載な地域なのだ。

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パッターニーの街を流れるパッターニー川。海に近く、マレー伝統の装飾が施されたゴレ船(左)が停泊しているのも見ることができる。

筆者はこれまで何度か深南部を訪れたが、危険な目にあうこともなく、行ったからといって当局ににらまれたこともない。とはいえ、何もなかったというと嘘になる。当局がらみの思い出は、留学中2回ほどあった。一度目は、友人の研究者と現地の大学生が組織する環境保護団体を訪ねた時だった。その後、当局関係者のライン・グループなるもので「何月何日午前何時何分、C大学の研究者と日本人の学生が学生団体と接触。安全保障上の脅威である」などと書かれたメッセージが回覧されたという。メッセージはすぐさま拡散し、友人経由でくだんのメッセージのスクリーンショット画面が私の元に届いた。周囲には、これで有名人だねと大笑いされた記憶しかない。二度目は、イミグレに行った時のことだ。タイでは、外国人は90日ごとにイミグレに出頭する義務がある。この90日レポートをパッターニーでした後、次はバンコクでおこなった。パッターニーの担当官(仏教徒)には勉強しに来たんだねくらいしか言われず、作業自体5分程度で終わった。バンコクでは1時間以上待たされた上に、担当官からは何故テロ地域であるパッターニーなど行ったのだと10分ちかく説教を受けたのだった。

話がずいぶん逸れてしまった。タイ人のあいだでイスラーム・テロリストがいる爆弾地域といった偏見を強く持たれる地域であるが、深南部には仏教徒も華僑系の人もたくさん住んでおり、何より、拍子抜けするほど普通に行くことができる。ここでは、パッターニー市街地にたどり着くことを念頭に置いて、いくつか行き方を紹介してみたい。

飛行機で行く

バンコクを起点にして、飛行機で行く場合には3通りの行き方がある(マレーシア側からのアプローチはまた別の機会に書きたい)。まず、バンコクから南部の中心都市ハジャイへ向かう方法である。ハジャイの良い点は、バンコクからの便数が多い点である。ハジャイから深南部各地域に向かうには、さらにいくつかの方法がある。お金に余裕がある場合は、ミニバス、タクシーを貸切るという手もあるが、ここでは現地の人が使っている方法を中心に紹介したい。

バンコクーハジャイ(ソンクラー県)

1) ロットゥを予約(便利)

タイで中距離移動をする際に便利なのが通称ロットゥと呼ばれるミニバスだ。ロットゥの運転手は、宙に浮くのではないかというほどの速さで運転をする。そのため事故も多く、怖くて乗らないというタイ人もいる。深南部には、各地域と空港を往復するロットゥサービスがある。便名と自分の電話番号を告げて予約をしたら、だいたい空港に到着してから30分くらいで各地に向けて出発することができる。値段は時間帯によって多少変わるが300バーツ前後(約1000円)である。私がよく利用しているのは、パッターニーに行くときはシーサヤームという会社である。

写真の説明はありません。
シーサヤームの出発時間と価格表。下の電話番号にかけて、自分の便名と電話番号を告げるだけ。

2) バスターミナルからロットゥで移動(安い)

ハジャイ空港に到着後、バスターミナルに移動する(コンソンといえば行けると思う)。空港から市内への移動はタクシーを利用するか、夕方5時頃までなら空港の駐車場を出たところにある道路でソンテウという乗り合いタクシーが巡回してくるのを待つ手もある。タクシーなら100バーツ(約350円)以上は絶対かかるが、ソンテウなら20バーツ(約70円)ほどで到着する。そこで、パッターニー、ヤラー、ナラーティワートなどと書かれたロットゥ乗り場を探す。値段は100バーツ(約330円)程度。人が集まったら順次出発。夕方5、6時頃までしか便がないので注意。

3) ハジャイ駅から鉄道で移動(安い)

タイ国鉄ハジャイ駅に向かい、スンガイコーロック行きの電車に乗る。午後は便数が異様に少なく、お昼の12時半頃が最終なので、早めに行って駅で確認をすることをお勧めする。どこで降りるかによるが、50バーツ(約170円)あればヤラー駅くらいまで行けるはずだ。

バンコクーナラーティワート(ナラーティワート県)

次に、バンコクからナラーティワートへ向かう方法である。この方法だと、空港からロットゥかタクシーを手配してもらう必要がある。ロットゥはナラーティワート市内か、ナラーティワート県内の国境に近いスンガイコーロック、タークバイなどしか行ってくれない。ナラティワートに直接着陸する方法は、ナラーティワートをめがけて行く場合や、マレーシアにそのまま行く場合にお勧めする。

バンコクーベトン(ヤラー県)

マレーシア人にも大人気の景勝地であるベトンに、2019年新たに空港が完成した。2020年から運航開始ということである。筆者はまだ利用したことがないため、利用してから追記したい。

鉄道・バス編につづく

(文:西 直美)

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